下っ端のホストがする仕事は客引きだ。
キャッチは最近規制が厳しくなってきて、
歌舞伎町や新宿の歓楽街や
人が多い場所には黄色いテープで
キャッチ行為は禁止
みたいな言葉をよく見かける。
でも俺から言わせてもらえば、
んなもん知るかっつーの。
はい、これでおしまい。
今日も下っ端の新人ホストは先輩に
命じられて客引きに励む。俺は
この商売が性にあっているみたいで
気の合う仲間がいる。
いつも三人でつるんで、歌舞伎町の真ん中の位置に
あるコンビニの前でたむろしている。
とりあえず見た目で女だってわかる人に
声をかけまくる。といっても
俺と一緒にいる2人が声を張り上げて
「初回どうですか初回初回」
とやかましく叫ぶものだから
大抵の女はおびえて去っていく。
これじゃあ逆効果だ。
俺は心の中でため息をつく。
俺たちはホストで成り上がろうなんて思ってない。
ただ若い時の思い出作り。そんな感覚だ。
この仕事を始めて一ヶ月経ったけど、一生
できる仕事じゃないし、この経験を活かして就ける
仕事なんてほぼないと諦めている。
俺は18だし、ただの若気の至りだ。
ホストをしているやつの中には愛人 契約を結んでいる男もいる。
というか、愛人契約を結んでいた、というような海千山千の
男たちだ。そういう普通じゃない男ばかりだ。
本当にお祭りみたいな毎日。
そう思いながら、仲間と喋っていたら
コンビニの中から歌舞伎町の
雰囲気とはちょっと違う女が出てきた。
白いコートに黒髪。
その黒髪はアップにセットしてあってキレイに
巻かれている。
妙に色気があることが気になったけど、綺麗な美人だった。
清楚な雰囲気なのに全身からどことなく
妖艶な感じが漂っている。水商売をしている俺には
それが嗅ぎ取れる。
素人なのに、裏がありそうな。
そんな女だった。
なんか引っかかってぼーっとしていると、
連れの二人がまたいつものように客引きを始めた。